大判例

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東京高等裁判所 昭和60年(ネ)3459号 判決

一 本件の本案訴訟の経過は次のとおりであることが認められ、これに反する証拠はない。

1 控訴人は、本件仮処分の本案訴訟として、被控訴人及び原審申立人山田恒雄(以下「山田」という。)を被告とし、(1)本件(一)(二)土地につきなされている控訴人から被控訴人に対する所有権移転登記の抹消登記手続、(2)本件(二)土地につきなされている被控訴人から山田に対する所有権移転登記の抹消登記手続、(3)横浜市中区松影町四丁目一三番地一所在建物一棟(以下「本件外建物」という。)につきなされている被控訴人の停止条件付所有権移転仮登記及び抵当権設定登記の各抹消登記手続を求める訴を提起した(横浜地方裁判所昭和四二年(ワ)第一八四五号、同四三年(ワ)第一五六九号)。控訴人の右請求の理由は、本件(一)(二)土地は控訴人が前所有者訴外笠原清一(以下「笠原」という。)から譲り受けてこれを所有するものであり、本件外建物も控訴人の所有であるというものであった。

2 右訴訟の係属中、笠原が控訴人、被控訴人及び山田(以下被控訴人と山田の両名を合わせて「被控訴人ら」という。)を被告として独立当事者参加の申立をし(横浜地方裁判所昭和四四年(ワ)第四一八号)、(1)控訴人に対して本件(一)(二)土地が笠原の所有であることの確認、(2)被控訴人に対して本件(一)土地につき真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続、(3)山田に対して本件(二)土地につき右同様の所有権移転登記手続をそれぞれ請求した。笠原の右参加請求の理由は、本件(一)(二)土地は笠原の所有であり、同人から控訴人にその所有権移転登記をしたのは真実のものではないというものであった。

3 横浜地方裁判所は、昭和五六年五月六日、右訴訟について、笠原の参加請求を全部認容し、控訴人の請求を全部棄却する判決を言い渡した。

4 右第一審判決に対し、控訴人及び被控訴人らが東京高等裁判所に控訴したが(同裁判所昭和五六年(ネ)第一二五一号、同年(ネ)第一三一五号)、昭和五七年四月二六日の右控訴審第六回口頭弁論期日において、控訴人は、本件(一)(二)土地に関する請求について訴訟より脱退し、被控訴人ら及び笠原は右脱退を承諾した。この結果、本件(一)(二)土地についての控訴人と被控訴人らとの間の訴訟係属は消滅し、控訴人の被控訴人に対する本件外建物についての停止条件付所有権移転仮登記及び抵当権設定登記の各抹消登記手続請求と、笠原の被控訴人らに対する本件(一)(二)土地についての所有権移転登記手続請求が単純併合の形態で審理されることとなった。

5 控訴人の右訴訟脱退後である昭和五八年九月六日、控訴人を代表者とする訴外有限会社新栄商事は、笠原との間で係属中であった別件訴訟(横浜地方裁判所昭和五〇年(ワ)第二三〇号)において、(1)本件(一)(二)土地については笠原が所有権登記を回復するものとし、同会社は笠原から他の土地の権利を取得すること、(2)笠原が本件(一)(二)土地についての所有権登記を回復できなかったときは、同会社の右他の土地の取得も取りやめとすることなどの合意を内容とした裁判上の和解を成立させた。

6 東京高等裁判所は、昭和五九年一〇月三一日、前記脱退後の控訴事件について、原判決を一部取り消し、笠原の被控訴人らに対する本件(一)(二)土地についての所有権移転登記手続請求を棄却し、控訴人の被控訴人に対する本件外建物についての停止条件付所有権移転仮登記及び抵当権設定登記の各抹消登記手続請求については控訴人の控訴を棄却した。同判決が笠原の被控訴人らに対する参加請求を棄却した理由は、本件(一)(二)土地は笠原の所有であり、同人はこれを虚偽表示によって控訴人に所有権移転登記をしたものであるが、控訴人から更にその所有権移転登記を受けた被控訴人が右虚偽登記につき善意であったから、笠原は、被控訴人及びその承継人である山田に対して控訴人が同土地の所有権を取得しなかったことを対抗することができないというものであった。

7 右控訴審判決に対して控訴人及び笠原がそれぞれ上告したが、笠原の上告については、昭和六〇年一月三〇日上告却下の決定がなされ確定した。控訴人の上告(昭和六〇年(オ)第二九九号)は、被控訴人ら及び笠原を被上告人とし、上告の趣旨は「原判決を破棄し、更に相当な裁判を求める。」というものであるが、控訴人の提出した上告理由書においては、上告の範囲につき明確にしないまま、専ら、笠原が本件(一)(二)土地についての所有権を被控訴人らに対抗することができないとした原判決の判断に法令の解釈適用の誤り及び審理不尽があることを主張している。

二 右認定の訴訟経過に基づいて考えれば、前記本案訴訟において控訴人が本件(一)(二)土地に関する自己の請求につき訴訟脱退をしたことにより、控訴人と被控訴人らとの間においては、笠原の被控訴人らに対する参加請求が認容されると棄却されるとにかかわりなく、控訴人の被控訴人らに対する右脱退請求につき請求放棄の効果が生じたものというべきである。そして、右請求放棄の効果は、笠原の参加請求についての判決の確定により、その判決の効力として確定するに至るものであるところ、右脱退後の訴訟の控訴審判決に対する笠原の上告が却下され確定したことは前記のとおりであるから、同判決中の笠原の参加請求を棄却した部分が確定した結果、控訴人と被控訴人らとの間における前記請求放棄の効果も確定をみるに至ったものであるといわなければならない。

これに対し、控訴人は、笠原の参加請求棄却の判決は論理的に控訴人の被控訴人らに対する脱退請求の当否を帰結するものではないから、右判決の効力として、脱退請求につき請求放棄の効果を生じるものではなく、同請求については空白状態になっていると解すべきであると主張するが、控訴人は、自己の意思により同請求につき訴訟より脱退して被控訴人らに対する権利主張をやめ、残存当事者に紛争解決を委ねたものである以上、参加請求についての判決の論理的帰結如何とはかかわりなく、残存当事者間になされた判決の効力として請求放棄の効果を認めるのが公平上相当であり、訴訟経済にも適するものというべきである。

また、控訴人は、訴訟脱退の効果を判断するについては、脱退の理由及び脱退者の意思等を考慮すべきであり、控訴人の脱退は笠原が被控訴人らに対して勝訴することを条件としたものであると主張するが、右主張のような脱退者の主観的事情を考慮して脱退の効果を二、三にすることは、脱退に伴う法律関係ないし他の当事者の法的地位を不安定ならしめるものであって妥当でなく、控訴人の脱退が客観的に右主張のような条件付でなされたものであると認めるに足りる証拠はない。

(村岡 佐藤 鈴木)

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